○写真は、(’89)平成元年6月2日(あと10日余で20歳):関西将棋会館の棋士室で棋譜を並べている。チラリと隣の盤面に目をやっている。こんな感じが村山聖のいつもの見慣れた姿であった。
                         (2007-6-24付 師匠森信雄七段のコメント)
≪聖の青春≫より
○平成元年6月のある日、森は久しぶりに麻雀を打っていた。その雀荘に村山がふらりと訪ねてきた。そして、森の後ろにそっと坐った。「どうしたんや、村山君」 森が話しかけると村山は何も言わずにニコニコしている。「何かいいことあったんか?」と森が聞くと、「はあ」と村山は照れくさそうに首をすくめた。「いいことあったんなら言うてみい」
○「あの、森先生」 「何や」 「僕・・・僕」と言って村山は少女のように顔を赤くした。
「僕、今日20歳になったんです」 「ああ、そうか、それで?」 「いえ、ただそれだけです」・・
「20歳になれて、嬉しいんです。20歳になれるなんて思っていませんでしたから」 そう言うと、村山は雀荘から出ていってしまった。
○しばらくして森は気づいた。村山にとって20歳まで生きるということは大きな目標だったのである。その目標を達成した喜びを誰かに告げたくて、いてもたってもいられずに雀荘にきたのだということを。そうか、村山君よかったなあ。森は弟子に言いそびれた言葉を何度も心の中で呟くのだった。