村山聖について、彼の師匠森信雄七段は後年 彼について こう語った。「私が村山聖を好きなのは、将棋にひたむきだったことと、病気のことも含めて一切グチを言わなかったことである。無念さや切なさ、遣り切れなさ、口惜しさ..その思いをすべて黙って将棋にぶっつけていたような気がする。」 聖は幼時より腎臓に重い疾患を持っており、生きること自体が闘いであった。いつまで生きられるかという思いを心の片隅に置き、名人を目指して指す彼の将棋は その必死さ において尋常なものではなかった。
谷川王将との王将戦七番勝負第1局二日目午後になると、なりふり構わずネクタイを緩めて必死の読み。 第1局は谷川が制した。「勝ちと思ったのは、終局の三手前です。」超人的な終盤の早や見えを武器とする谷川の言葉が一手を争う激闘の凄さを物語っている。初めて立つ大舞台に村山聖は怯むどころか、凄みさえ感じさせる迫力で谷川に襲いかかっていったのだった。