村山聖について、彼の師匠森信雄七段は後年 彼について こう語った。「私が村山聖を好きなのは、将棋にひたむきだったことと、病気のことも含めて一切グチを言わなかったことである。無念さや切なさ、遣り切れなさ、口惜しさ..その思いをすべて黙って将棋にぶっつけていたような気がする。」 聖は幼時より腎臓に重い疾患を持っており、生きること自体が闘いであった。いつまで生きられるかという思いを心の片隅に置き、名人を目指して指す彼の将棋は その必死さ において尋常なものではなかった。
王将戦が終って1ヵ月後の平成5年3月12日、村山は(順位戦9勝1敗の好成績で)B級1組への昇級を決めた。(写真は鈴木輝との最終戦終盤) タイトル挑戦と B級1組昇級によって 村山は一気にスターダムにのし上がった。倒すべき相手はもう何人もいない。 長い長い順位戦を終え、村山は前田アパートに帰りねぐらへ潜りこんだ。小さく呟いてみた。 「名人へもう一歩だ」